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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(オ)63号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代理人徳永平次の上告理由第一点について。

しかし、原判決は、『本件仮処分の本案訴訟である所論不動産登記手続並びに土地建物引渡請求事件につき昭和二四年一一月一四日所有権移転登記手続等を求める部分を棄却し予備的請求である損害賠償請求を認容し被告たる上告人清に対し金三四万円余の支払を命じた第一審判決の言渡のあつたことは当事者間に争がないけれども本件口頭弁論終結当時(同年一一月一八日)の現在においては未だこれに対する控訴の提起もなく、従つて、右第一審判決が上訴審において取消されるおそれがないとは速断できないから、民訴七四七条にいわゆる「事情の変更したとき」に該当するものとはいえない』旨説示しているのである。そして、民訴七四七条にいわゆる「事情の変更したとき」に当るか否かは当該裁判所が諸般の事情を考慮して自由に決すべきところであるから、原判決が右のごとく判断したからといつて違法であるとはいえない。それ故、論旨は、採ることができない。

同第二点について。

原判決の確定したところによれば、被上告人の上告人滋に対する本件仮処分申請における請求は、所有権に基づき本件土地建物の引渡を求めると共に虚偽譲渡を原因とする滋のための所有権移転登記の抹消登記手続を求めるものであり、本件起訴命令に基づいて滋に対し被上告人の提起した詐害行為取消の訴における請求は右譲渡行為を詐害行為として取消し同様抹消登記手続を求めるものであるというのである。されば両者の間に請求の基礎において同一性があるとした原判決の判断は是認するに足りるから、本論旨も採用し難い。

同第三点について。

上告人両名間の本件不動産贈与契約を第三者である被上告人が通謀虚偽の意思表示であると主張しうることは民法九四条一項により明瞭であつて、何等民法一七七条の精神に反するところはない。また、原判決が本件仮処分申請事件の本案訴訟事件を所論福岡地方裁判所久留米支部昭和二二年(ワ)一六五号及び同二三年(ワ)二一号事件と認め、また、本件仮処分申請の理由中に示された譲渡の日時、譲渡当事者の身分関係等の外形的事情によつてその譲渡が虚偽である事実が疏明されているとした説示は、当裁判所においても是認されるし、その他の所論は、原判決の判示に副わない非難であるから、本論旨も採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅)

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